デジタル音響機器

本研究室が独自に開発した、サンプリングジッターの測定技術を用いて、デジタル音響機器の性能向上を目指します。

図1.1:ゼロ交差ゆらぎの和と差の頻度分布。二つの頻度分布の幅の違いから、実験に用いたデジタルオーディオプレーヤーのサンプリングジッターは43ピコ秒と求まった。この図は論文から引用。

 

背景

デジタルオーディオプレーヤー(CDプレーヤーを含む)は、デジタル音楽ファイルを読み出し、再生音に対応するアナログ電気信号に変換し、出力します。そして、この変換過程(Digital to Analog Conversion:DAC)は一定の周期で行われるという前提の元に、デジタル音楽ファイルが作成されています。しかしながら、現実のデジタルオーディオプレーヤーでは、内部にある基準信号源の安定性などが原因となり、必ずしも一定の周期でDACが行われていません。このDACが行なわれるタイミングのずれを、サンプリングジッターと呼びます。

私たちは、デジタルオーディオプレーヤーの再生性能を、精密かつ手軽に測定する方法を、米国音響学会誌 The Journal of the Acoustical Society of America にて公表しました [Makoto Takeuchi and Haruo Saito, "Absolute measurement of sampling jitter in audio equipment", The Journal of the Acoustical Society of America, 154, 443--453 (2023). ]。


本研究室が独自に開発した測定法を用いることで、オーディオ機器の個人ユーザーは、より原音に忠実なデジタルオーディオプレーヤーを、客観的に選定することができます。また、本測定法は、オーディオ機器の製品開発にも有用です。

 

サンプリングジッターが及ぼす影響(定性的な説明)

この図は、円盤式蓄音機から出力される音楽と、その音楽を鑑賞する人間を表しています。再生される音楽が歪まないよう、レコードの回転速度を一定に保つ必要があります。同様の理由で、デジタルオーディオプレーヤーの場合は、DACのタイミングを一定の周期に保つ必要があります。